希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

大学英語入試「民営化」の中止を

東大・京大など旧7帝大中6大学が、出願要件ないし必須要件としない。

文部科学省国立大学協会の強い縛りがあるにも関わらず、大学英語入試への民間試験の導入は、スタート前から前代未聞の異常な展開となりました。

なぜ、このような事態になったのでしょうか。

大学英語入試「民営化」の問題点を、『全大教新聞』第357号(2019年3月10日)に寄稿しました。

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全大教というのは、全国大学高専教職員組合の略称で、和歌山大学職員組合など国公立大学などが加盟する全国組織です。

この記事を読まれた「地方国立大学教員」(匿名)から私に葉書が届き、次のように書かれていました。

「英語民間試験利用の問題点の指摘、全くそのとおりだと思います。国大協内で真面目に議論が行われたとは思えませんが、国大協のガイドラインを完全には無視できないという大学執行部の主張に従い、本学も東大方式を採用することになりました。弱小大学の精一杯の抵抗と言ったところです。」

「東大方式」とは、(1)CEFRのA2以上を出願要件とする。ただし、(2)高校からA2レベルに相当する英語力があるとの証明書、または(3)いずれも提出できない場合には理由書を出せば代替措置とする、というものです。

要するに、民間試験は出願の必須要件にはしない、という賢明な方針です。

この東大方式が、その後の流れを変え、全国の大学に希望の光を与えていることがわかります。

W大学でも「英語入試に民間試験A2の成績を出願要件とする」という大学執行部の流れができつつありました。

しかし教育学部の教授会ではこの方針は認められず、継続審議を経て、最終的に民間試験は出願資格として活用するが、やむを得ない事情がある場合には理由書をもって代替させることに決しました。

また、学部長は出願資格はA2ではなくA1にしたいと明言しました。
これは熊本大学の英断と同様、素晴らしいことです。

いま、全国各地で同様のバトルが展開されていることでしょう。

制度設計の不備が、学校現場に大混乱を招いています。

政府や文科省の関係者は、この失策でもまた、誰も責任を取らないつもりなのでしょうか。