希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

懐かしの英語参考書(20)山崎貞『公式応用 英文解釈研究』初版

2010年も今日から2月。
連載「懐かしの英語参考書」(第1期 英文解釈シリーズ)も第20回という節目。

となれば、超大物にご登場いただこう。
実に100年近く親しまれてきた「山貞」こと山崎貞の『英文解釈研究』である。
2008年末に復刻版(1965年版の)が出るや、飛ぶように売れている伝説の参考書だ。

ただ、一口に山貞の『英文解釈研究』といっても1979(昭和54)年の9訂版『新々英文解釈研究』まであり、数回に分けて紹介するしかない。
*山貞の参考書の書誌データについては過去ログ参照

その第1回は、ジャーン! 国会図書館にも全国の大学等の図書館にもない超レアもの。
1912(大正元)年発行の「初版の初刷」である。

山崎貞『公式応用 英文解釈研究』初版

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山崎貞は1883(明治16)年に長野県に生まれ、1901(明治34)年に長野中学校を首席で卒業。
1906(明治39)年に早稲田大学政治科を卒業し、さらに斎藤秀三郎の正則英語学校文学科に入って英語を学んだ。同校講師の山田巌に見出され、正則英語学校で11年間教える傍ら雑誌の編集に従事した。
1910(明治43)年に文部省中等学校教員検定試験英語科に合格、さらに高等学校卒業検定試験に合格して、1919(大正8)年に東京帝国大学英文科を卒業。
1920年に正則を辞し、新設された早稲田高等学院の専任教授となった。
1930(昭和5)年没。
山崎の『英文解釈研究』は「学習参考書としては密度が高く、正確無比、傑作で、日本の英学界に貢献するところ大であった」(大村喜吉)。
山崎が公式応用 英文解釈研究』(1912)を発表したとき、彼はまだ30歳にも達していなかった。

『公式応用 英文解釈研究』英語研究社、1912(大正元)年10月1日 

本編と解答編の2分冊で、本編は本文365頁+索引14頁=379頁。定価85銭。 
扉はA CLASSIFIED COLLECTION OF IDIOMATIC ENGLISH CONSTRUCTIONS AND PHRASES / ARRANGED AND ANNOTED BY Y. YAMAZAKI(Y. YAMAZAKIと記されているが、1925年の3訂版ではT. YAMAZAKIとなっているから、初版の"Y."は"T."の誤植だろう。はやり、ヤマテイなのだ。)

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「はしがき」には以下のような記述がある(抜粋)。

◆「英文を読む者――殊に受験者――の是非一通り心得て居らねばと思はれるやうな構文成句の一般を説き度いと思ふて筆を執つた」
◆「収録した形式は二百余であるが、比較研究に便し、記憶を助くる為、形の似たもの意味の似たもの等は一括して一處に集め、百十九項に分ち、配列も文法的の次序に依らず、やはり形や意味の類似を辿つて脈絡を通ずるやうにした。」
◆「例題は重に現今行はれて居る英語教科書中から採り、尚明治三十年度から四十四年度に至る諸学校入学試験問題は大部分之を収録した。」
◆「本書編纂につき先輩山田巌氏から幾多有益なる助言を与へられ、解答篇訳文の選定には友人宇井忠清氏の多大の助力を得た」

目次は慣用語句と構文の項目別で、119項目、1,100例文を収録している。
例文は各種英語リーダーや入試問題より、採られている。

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なお、例題への解答編が別冊なので使いにくかったのか、1916(大正5)年発行の改訂版からは、本編と解答編が1冊に収められる。

この初版は発売後3年間に十数版を重ね、「二万余部を売り尽くして尚需要が止まない」(1916年版の「はしがき」)というから、伝説は本物。
まさに、明治と大正を画する英語参考書だった。

その後の改訂版の変遷については次回をお楽しみに。