希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

2010-01-01から1年間の記事一覧

経済優先と子どもの危機

本日9月2日の『朝日新聞』に掲載された「子ども権利 守れてる?」には深く考えさせられた。 国連子どもの権利委員会の日本担当委員でドイツの教育学者であるロタール・クラップマン氏の意見が紹介されていた。 同委員会から、日本は今回も40項目以上の是正…

ブログ開設1周年

おかげさまで、ブログ開設1周年を迎えました 2009年9月1日にこのブログ「希望の英語教育へ」を開設して、本日で1周年を迎えることができました。 この間、のべ3万人近いみなさんと交流することができました。 ありがとうございました。 とても嬉しく、…

大津由紀雄さんの学校英語教育論と「学校英文法」

8月4日の朝日新聞における松本茂氏との「誌上争論」に続き、8月21日には北海道新聞夕刊に大津由紀雄さん(慶應義塾大学)の「日本の学校英語教育」が掲載されました。 「争論」の記事は朝日の編集委員がまとめたものですが、今回は大津さん自身の書き下ろ…

根岸恒雄先生の新刊『楽しく英語力を高める“あの手この手”』

埼玉を拠点に、英語科における「学びの共同体」づくりなどの卓越した英語教育実践を展開している根岸恒雄先生が、待望の新刊『楽しく英語力を高める“あの手この手”:教科書の扱い・協同学習』を8月に三友社より刊行されました。 →Amazon 依頼されて書きまし…

新学習指導要領にどう対処するか(7)

新高校指導要領(外国語編)に対する批判を続けてきましたが、ひとまず今回で終わりです。ふー。 その前に、広島大学の柳瀬陽介先生が外国語教育における日本語利用の意義について、「翻訳教育の部分的導入について」と題した極めて優れた文章を書いておられ…

新学習指導要領にどう対処するか(6)

文部科学省の太田光春視学官といえば、新学習指導要領の策定時に外国語の教科調査官をしていた人で、「授業は英語で」の方針に深く関わった人物の一人です。 その太田氏と会って話を聞いた友人によれば、氏は「学習指導要領は法律です」と言い放ったそうです…

新学習指導要領にどう対処するか(5)

昨日(8月26日)は、アメリカ留学に出発するゼミ生の送別パーティーがありました。 「お見合いゲーム」で盛り上がったあとは、アメリカで寂しくないようにと、みんなで作った写真・コメントアルバムを渡し、ゼミの合宿やキャンプが写っている「エリゼミDVD」…

新学習指導要領にどう対処するか(4)

高校の新学習指導要領は、「授業は英語で」の文言に象徴されるように、「和訳」を極端に嫌っています。 指導要領解説でも、「訳読によらず」と明記されています。 しかし、高校生の学習にとって、和訳は決して悪いことではありません。 そもそも、訳読ではな…

新学習指導要領にどう対処するか(3)

3日間におよぶ教育のつどい2010(教研全国集会)から戻りました。 昼も夜も全国の英語教員の報告を聞き、語らい、飲み、とても充実した3日間でした。 いつもながら、困難な状況の中で創意工夫に満ちた献身的な英語教育実践をされている人たちの話を聞くこ…

新学習指導要領にどう対処するか(2)

今日8月15日は日本の「敗戦」記念日。 朝鮮半島では「光復節」です。 同じ日なのに、歴史的評価が大きく異なる意味を考える日にしたいと思います。 そして明日は教員免許更新講習「英語授業改善のあの手この手」をやらなければなりません。 この更新制に大…

新学習指導要領にどう対処するか(1)

お盆入りの8月13日、大阪大学中之島センターで、大阪大学大学院言語文化研究科主催の公開講座「教員のための英語リフレッシュ講座」があり、僕は「新学習指導要領にどう対処するか」と題して講演しました。(お盆でも働いているのですよ・・・) 9日から4…

伊藤和夫の外国語教育論(2)

絶えざる自己批判による進化 否定は発展の原動力である。 西洋哲学を専攻した伊藤和夫の精神には、その底流にこの考えが流れていたのではないか。 伊藤和夫は自分自身に対して仮借のない批判を加えることで、たえず進化をとげてきた。 たとえば、彼の最も初…

ゼミ夏合宿

8月9・10日、和歌山県有田川町清水で、江利川ゼミの夏合宿を行いました。 総勢12名。他のゼミからの参加者の方が多いのが、我がエリゼミの面白さ。 時代はハイブリッドです。 最大のイベントは有田川の清流での川遊び。 シュノーケルをつけて潜り、イカダ…

朝日の「英語教育論争」に大津さん補足

15年ほど前に担任した鈴鹿高専時代の教え子4人が、昨日から和歌山に遊びに来てくれました。 海鮮バーベキューをし、露天風呂に入り、花火を観て、我が家でビンテージワインと地酒の日本酒を楽しみながら、思い出話に花を咲かせました。 みんな、たくましく…

ゼミの同窓会(8月6日)

なつかしい顔、顔、顔。 午前3時まで、飲み、笑い、飲み、笑いました。 8月6日、昨年と一昨年卒業したゼミ生たちを中心に、エリゼミ同窓会が開かれました。 乾杯の前に、65年前のこの日、広島で原爆の犠牲になられた人たちへの黙祷を捧げました。 そして…

伊藤和夫の外国語教育論(1)

7.11慶應シンポ「英文解釈法再考:日本人にふさわしい英語学習法を考える」のために、明治以降の英文解釈法に関連する本を集中的に読んだ。 その中で、あらためて「すごい!」と思ったのは、駿台予備学校講師だった伊藤和夫(1927-1997)の業績、とりわけ彼…

今日の朝日新聞は英語教育特集!?

本日(8月4日)の朝日新聞は必読だ。 大阪本社版の第1面は「英語授業 助手と連携『偽装請負』」 以前、このブログで紹介した「読売新聞」の小学校外国語活動における「業者委託」の問題性を、さらに深く追求した秀逸の記事。 →過去ログ参照 第2面にも請負A…

教え子を「戦場」に送らないために(3)

去る7月30日に、この春に大阪の中学校の英語教諭になったゼミ生が、アポもなしに突然ゼミに参加してくれた。 ゼミに続く「中等英語科教育法」の授業でも、飛び入りのゲスト・ティーチャーとして、教員採用試験の勉強法や、学校の様子を話してもらった。 後…

前期の授業終了!

7月31日をもって、2010年度前期の授業が終わりました。 みなさん、お疲れ様でした。 僕は和歌山大学で6コマ、大阪大学で2コマのすべて異なる科目の授業をこなし、しかも今回はすべてテキストを使わない授業にチャレンジしました。 毎回のプリント作りやCAL…

小学校外国語活動についての読売新聞の記事(7月29日)

読売新聞7月29日付「学力考 第3部」が小学校外国語活動について、面白い事実を明らかにしている。 見出しは、小学校英語 授業を委託 外国人助手の確保懸命 千葉県柏市の小学校で実際起こった(起こっている)話。 6年生の「英語活動」(指導要領では「外国…

7.11英文解釈シンポの報告

7月11日に慶應義塾大学で開催されたシンポジウム「英文解釈法再考:日本人にふさわしい英語学習法を考える」について、同大学大津ゼミ院生の永井さんが、たいへん素晴らしい報告記事を書いてくださっています。 大津研blog ↓ http://oyukio.blogspot.com/201…

ゼミ通信 LaLaLa 13号

ゼミ通信 LaLaLa 13号が届きました。 担当のWakaちゃん、ありがとう。 おしゃれなデザインで素敵ですね。 4年生のみなさん、教員採用試験の第一次、お疲れ様でした。 みなさんの頑張りが報われることを心から祈っています。 前期のゼミでは、英語教育の理論…

教え子を「戦場」に送らないために(2)

朝日新聞の連載「いま、先生は」の第2回(7月20日)は、新任教師の自殺をめぐる内容だった。 静岡県磐田市の小学校教師・木村百合子さんが自家用車内で焼身自殺したのは、市立小学校に採用されて半年後のことだった。 生前、友人宛に次のようなメールを送…

教え子を「戦場」に送らないために(1)

今日は和歌山、大阪などの教員採用一次試験。 しのぶ、もんちゃん、受講生のみんな、どうか頑張ってほしい。 僕の英語科教育法を10年ほどの前に受講し、今は大阪堺市の中学校教員をしているA君に先日会った。 4月に移動した新しい職場が、生徒の「荒れ」で…

本日、和歌山英語教育研究会

すでにご案内しましたが、本日(7月24日)、午後2時より、和歌山英語教育研究会を開催いたします。 どなたでもご参加いただけますので、お集まりください。 日時: 7月24日(土) 14:00~16:30 会場: 和歌山大学 栄谷キャンパス 教育学部棟L-105 キャン…

7.11慶應シンポ 英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(9最終回)

英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(9最終回) 今回も、多くの先行研究のお世話になりました。 主要なものを列挙いたします。 感謝を込めて! 主要参考文献 伊藤嘉一(1979)「現代的英文解釈論」『英語教育』6月号、大修館書店 上井磯吉(1915)「文部…

7.11慶應シンポ 英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(8)

英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(8) これまでの議論をふまえ、英文解釈法の歴史的意義を総括し、その上で現代的な課題について述べてみましょう。 5. 英文解釈法の歴史的意義 1. 日常生活で英語を必要としない日本人の英語力の骨格を形成し、日本の…

ゼミ通信LaLaLa 11号

ゼミ通信 LaLaLa 11号(7月2日分)がYamahachi君より届きました。 12号と前後しましたが、ご覧ください。 前期の授業も、残すところ各1回。 猛暑に負けず、がんばろう! 教員採用試験組もがんばれ!

7.11慶應シンポのハンドアウトがアップされました。

7.11慶應シンポジウム資料は大津研blogで 7月11日(日)に開催された2010 年度慶應義塾大学言語教育シンポジウム「英文解釈法再考:日本人にふさわしい英語学習法を考える」の配布資料が大津研blogにアップされました。 当日配布されたハンドブックと3人の…

7.11慶應シンポ 英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(7)

英文解釈法の歴史的意義と現代的課題(7) 4. 英文解釈法の現代的課題 いまなぜ、英文解釈法を再考する必要があるのでしょうか。 一言で言えば、会話偏重の「コミュニケーション重視」路線が、子どもたちの深刻な英語力低下を招いている可能性が高いからで…