希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)2

歴史をふまえ、英語教育の現在と未来を考えるブログです。

英語教育史料

英作文参考書の歴史(5)メドレー・村井『註解新和文英訳』(1918)

最強の英作文コンビによる名参考書 ○ Medley, A. W.・村井知至『註解新和文英訳』泰文堂、1918(大正7)年6月20日。 英語タイトル:Aids to Translation from Japanese into English. 緒言2+目次3+脚註目次6+本文227+索引20+解答編94=352頁 *写真は1935(…

英作文参考書の歴史(4)井上十吉添削『和文英訳添削実例』(1899)

日本最初の英作文の添削指導書 ○井上十吉添削・英語学攻修会編纂『和文英訳添削実例』成美堂書店、1899(明治32)年3月1日発行。 223頁。 前回、岡田実麿の『英作文着眼点』(1911)を紹介し、赤字による添削指導が大きな特長であることを示した。 そうな…

英作文参考書の歴史(3)岡田実麿『英作文着眼点』(1921)

2色刷の添削による英作文指導 ○ 岡田実麿『英作文着眼点』開文社、1921(大正10)年1月1日発行。 英語タイトルはHELPS TO ENGLISH COMPOSITION: COMMON MISTAKES CORRECTED. ページ数は、目次4+INDEX 26+総論4+本編311+練習問題解答編71=416頁 岡田実麿は…

英作文参考書の歴史(2)南日恒太郎(その2)

日露戦争後の南日恒太郎『和文英訳法』(2) 『分類詳解 和文英訳法』(1904)は、日露戦争後に増補改訂された。 ○ 南日恒太郎著・神田乃武閲『増訂 和文英訳法』1907(明治40)年2月3日発行。 本編166頁+別冊「英文之部」(解答)81頁。 版によって装丁…

英作文参考書の歴史(1)南日恒太郎(その1)

30回以上にわたって、明治から昭和までの「英文解釈」に関する参考書を紹介してきた。 もっと紹介したいものも少なくないが、きりがないので、ひとまず終了としたい。 ここで、ちょっと休もうかなという気もした。 でも、書庫で眠る参考書たちから、「ぼくも…

懐かしの英語参考書(31)小野圭次郎の英文解釈(5)

小野圭『英文の解釈』の変遷(3)「ユネスコ憲章」を掲載 ○〔第8改訂〕『新制 英文の解釈研究法』小野圭出版、1959(昭和34)年7月15日第8訂版1020版発行。540頁 小野圭次郎は、1952(昭和27)年に83歳で亡くなった。 だが、「小野圭シリーズ」はなおも…

懐かしの英語参考書(30)小野圭次郎の英文解釈(4)

小野圭『英文の解釈』の変遷(2)「ポツダム宣言」を掲載 ○ 〔第6改訂〕『新制 英文の解釈研究法』山海堂、1947(昭和22)年7月発行750版。 巻頭に「第六訂版を出すに就いて」を付す。また、「終戦後の再刊行に就いて」が付いている(1948年5月の753版)。 …

懐かしの英語参考書(29)小野圭次郎の英文解釈(3)

小野圭『英文の解釈』の変遷(1) 晩年の小野圭次郎(『新制 英語の文法研究法』1951年版より) 小野圭の『英文の解釈』は1921(大正10)年の発売から快進撃を続け、少なくとも10回は改訂されながら、1970年代まで発売されていた。 ○ 〔第2改訂〕『最新研究…

懐かしの英語参考書(28)小野圭次郎の英文解釈(2)

小野圭『英文の解釈』の初期バージョン ○ 『最新研究 英文の解釈 考へ方と訳し方』山海堂、1921(大正10)年9月5日初版発行。 *写真は、書き込み等のため、1923(大正12)年4月15日訂正29版と1929(昭和4)年2月20日訂正228版〔増訂版の直前の版〕を使用し…

懐かしの英語参考書(27)小野圭次郎の英文解釈(1)

伝説の小野圭次郎「英文解釈」シリーズに迫る 小野圭次郎(通称「小野圭」)の英文解釈書について述べるには、「ふー」と深く息を吸い込み、「がっ!」と気合いを入れる必要がある。 それほど、小野圭は気安くは扱えない。 まず、先行研究が少なくない。なか…

懐かしの英語参考書(26)清水起正『新英文解釈』(1918)

南日恒太郎の『英文和訳法』(1915)にも協力した清水起正は、入試に出る熟語(idiom)を中心にすえた、受験本位の英文解釈書を著した。 熟語中心・受験本位の清水起正『新英文解釈』(1918) ○ 清水起正『新英文解釈』北星堂、1918(大正7)年5月2日発行。…

懐かしの英語参考書(25)南日恒太郎『英文和訳法』(1914)

南日恒太郎の英文解釈書は、『難問分類 英文詳解』(1903)から『英文解釈法』(1905)へと進化し、大正期に入ると、ついに彼の最高傑作『英文和訳法』(1914)が誕生する。 南日「英文解釈」の最高傑作『英文和訳法』(1914) ○南日恒太郎『英文和訳法』有…

懐かしの英語参考書(24)南日恒太郎『難問分類 英文詳解』(1903)

英語参考書の「南日時代」を告げる英文解釈の古典 ○ 南日恒太郎『難問分類 英文詳解』ABC出版社(後に有朋堂)、1903(明治36)年6月26日発行。 本文121頁+別冊「訳註之部」104頁。校閲・序文(英文)は神田乃武(かんだ・ないぶ)。 1904年2月の第5版(…

懐かしの英語参考書(23)山崎貞『新々英文解釈研究』の進化(2)

入試の激変と『新々英文解釈研究』の運命 1970年代に入り、大学入試の状況は大きく変貌する。 高校に次いで、大学の大衆化が進んだ。その速度と変動はあまりに激しかった。 変化は高度成長下の1960年代に進行しつつあった。 高校進学率は1955年の51.5%が、6…

懐かしの英語参考書(22)山崎貞『新々英文解釈研究』の進化(1)

山崎貞は1930(昭和5)年9月に亡くなる。1883年生まれだから、まだ40代の若さだ。 しかし、『新々英文解釈』はその後も進化を続ける。 ○ 高見頴治改訂(増補改訂版=4訂版)『新々英文解釈研究』研究社、1940(昭和15)年1月発行。464頁。 ○ 高見頴治再改…

懐かしの英語参考書(21)山貞『新英文解釈』から『新々英文解釈』へ

山崎貞の『英文解釈研究』は9訂版まで刊行されたが、そのうち特に大きな改訂は、2訂版(1916年)、3訂版(1925年)、7訂版(1965年)、9訂版(1979年)の4回である。 『公式応用 新英文解釈研究』(1916 二訂版) 1916(大正5)年1月5日発行で、版…

懐かしの英語参考書(20)山崎貞『公式応用 英文解釈研究』初版

2010年も今日から2月。 連載「懐かしの英語参考書」(第1期 英文解釈シリーズ)も第20回という節目。 となれば、超大物にご登場いただこう。 実に100年近く親しまれてきた「山貞」こと山崎貞の『英文解釈研究』である。 2008年末に復刻版(1965年版の)が…

懐かしの英語参考書(19)高村勝治『解明 英文解釈』

1月は1年で最も忙しい月だ。 年度末の授業に加え、院生の修論指導に学生の卒論指導。 それも終わり、今日は授業もなかったので年休をとった。といっても、明日土曜日に実施される推薦入試業務の代休だが。 おかげで今日は、今年1年の研究計画を文章化し、…

懐かしの英語参考書(18)2つの『チャート式英文解釈』

○ 鈴木進・今関敦著『チャート式シリーズ 英文解釈』(1972) ○ 荒木一雄編著『チャート式シリーズ 構文中心 新英文解釈』(1978) 英語に進出したチャート式の実力 「チャート式」と聞いて、「ああ、むかし使ったな」と思う人は多いだろう。 赤と黄色を基調…

懐かしの英語参考書(17)河村重治郎・吉川美夫・吉川道夫『新クラウン英文解釈』

河村重治郎・吉川美夫・吉川道夫『新クラウン英文解釈』(三省堂、1969) 三省堂を代表する英語参考書の名著 三省堂(さんせいどう)といえば、1881(明治14)年創業の歴史ある出版社。英語の辞書や教科書の分野でも定評がある。 その三省堂の英語分野でのト…

明治期の英語入試問題(現物)

明治37年高等学校大学予科入学者選抜者試験問題 英文解釈の参考書の歴史をたどっているが、こうした参考書を研究する際の前提条件がある。 入試問題の変遷史である。 すでに見てきたように、日本では「英文解釈」の参考書が発達し、その技術が研ぎ澄まされて…

懐かしの英語参考書(16)芹沢栄『英文解釈法』

工芸品のような完成度のロングセラー 芹沢栄『英文解釈法』(金子書房、三訂版1958) 大好きな参考書だ。 眺めているだけで惚れ惚れする。「美しい」のである。 表紙は金子書房らしい黄色基調の簡潔なもの。 美しいのは中身だ。 229問ある例題がすべて1ペー…

懐かしの英語参考書(15)原仙作『英文標準問題精講』

出典研究の第一人者による頻出問題の宝庫 いよいよ大御所の登場だ。 原仙作『英文標準問題精講』(略して「原仙の英標」)といえば、1933(昭和8)年の初版以来、英文解釈分野では受験生のアイドル(?)的参考書だった。(写真左は1954年版、右は1982年版…

「英文解釈」という用語の登場

懐かしの英語参考書(12)で、日本で最初に「英文解釈」と銘打った参考書が梅澤壽郎『英文解釈法』(1905:明治38年)だと紹介した。 しかし、「英文解釈」自体はそれ以前から教えられていた。 いつ頃から「英文解釈」という用語が登場したのだろうか その謎…

懐かしの英語参考書(14)宮崎孝一『英語長文解釈の完全研究』

「長文解釈」と銘打った唯一の参考書 戦後の大学入試英語の一つの傾向は、長文化したことである。 そのため、早くは1950年代初めから、これに対応した参考書が出ていた。第6回で紹介した佐山栄太郎『最新英文解釈』(1951)や、第2回の成田成寿『高等英文…

懐かしの英語参考書(13)荒牧鉄雄『現代英文解釈』(三省堂)

先日のセンター試験の監督があまりにキツかったのか、体調を壊した。 念のため医者に行ったら、なんと新型インフルエンザにかかっているとのこと。 1月22日(金)まで出勤停止。なんと! 卒論の追い込み時期に、学生にはたいへん申し訳ない。 噂のタミフルを…

懐かしの英語参考書(12)梅澤壽郎『英文解釈法』

「英文解釈」と銘打った最初の本 日本で最初の英文解釈の本は何だろうか? 英語教育史の研究者の間では南日恒太郎の『難問分類英文詳解』(ABC出版社、1903:明治36年6月26日発行)が有名だが、それ以前にもたくさんの英語参考書や英文解釈の本があったこと…

懐かしの英語参考書(11)竹原常太『新英文解釈法』

統計的・科学的な手法を取り入れた画期的な英文解釈書 竹原常太(1879~1947)は、畢生の大作『スタンダード和英大辞典』(1924)の著者として英語教育史の業界では有名だ。 この辞書は、彼が米国留学中から集めた用例をもとに編集した辞書で、1つひとつの…

懐かしの英語参考書(10)青木常雄の英文解釈書(その2)

英文解釈の完成をめざすハイレベル参考書 青木常雄の英文解釈参考書(その2) 今回は単著の『英文解釈の研究』培風館、1955(昭和30)年9月20日初版発行、写真は1960(昭和35)年4月20日の初版第16刷。1962(昭和37)年には改訂版も出ている。 「本書は先に…

懐かしの英語参考書(9)青木常雄の英文解釈書(その1)

3連休は英語教育史学会の論文審査委員会、理事会、研究例会、飲み会で東京。 戻るとすぐに、月刊『英語教育』3月号のために寺島隆吉先生の『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』(明石書店)の書評を書く。先ほど編集部に送った。ふー。…